深夜の点滅信号。
赤と黄の十字の光が、小雨ににじみ、
濡れた路上のアスファルトに、吸い込まれている。
ひっそりと、ひとけの消えた街並み・・・・
郊外の暗闇の路上に立つ街灯・・・・
黒くゆらめいて反射する川面のきらめき・・・・
そんな深夜の風景は、
昼間の陽射しと、人々にかきまぜられた気配も沈んで、
自分は、
その止まった気配の中で、
静かにその上澄みの空気を吸い、
張りつめていた緊張感や警戒心をゆるませる。
ひとびとが寝静まった、冷たい外気と、うす暗いひかりを、
この内側に取りこんで染まり、
体温を吐きだしつづけていると、
体が少し透けてきて、
いま自分が、
ここにあることを、あらためて知り、孤独な安心を覚える。
そしてただ自分を問い、目的もなく、探し過ぎてゆく・・・・。
この世界では、音はいらない。
ひとつの音が、あまりに心に届くので、
不意な物音に襲われれば、心の芯に亀裂がはしり、
無防備な自分がこわれてしまう。
わずかな流れ、淡く薄らいだ風の声・・・・
枝葉が触れあう、
かすかなざわめきに包まれて、
そのままを・・・
無音の景色に変えるとき、
遠く闇を見通す眼が知らず備わっている。
さわさわと枯葉を踏み、
木の実を拾いあげている、
この影の指と、紺色の映った瞳。
そこでは、所詮自分も、
拾いあげた木の実も、
なんら変わりのない一部としての意味しか残らず、
その最後には、自分の価値や姿も消えさってしまう。
押しつぶされそうな大きさで、流れている雲の下で、
ひろがる静けさに、たたずめば
いまここに、自分の呼吸という自然の音、リズムがあるだけだ。
ささやかに・・・・
ひそやかに・・・・
できるかぎり無垢なままに、
必要以外の知識を自分の中に入れないで
激しさだけを心に残し・・・ 置いておく。
ただ、通りすぎている気配の中へ、
・・・とらえようもない無意識の中に
・・・・形ではない、流れるものの、
音もない激しさの中で・・・
ひとり、こころを響かせている。